知っているようで知らないオーケストラ楽器おもしろ雑学辞典

緒方英子 著


職業や趣味で常に楽器に携わる人でも、自分の楽器以外の楽器については案外知らないものである。そして知られざるその楽器なりの快楽、つらさ、裏技があるものだ。


その点について、この本の筆者は丹念に取材(主にN響)を重ね、楽器奏者のほかにも指揮者や作曲家、楽器製作者に至るまで裾野を広げて、素人にもわかるような平易な文章で一冊の本にまとめ上げてくれた。


テューバでは日本を代表する奏者、多戸幾久三氏に焦点をあてているわけだが、「テューバを吹くとその低周波の影響で眼球が振動してテレビの画面が揺れて見える」という現象を紹介している。


テューバを吹きながらテレビを見たことがないので私にはその現象についてのコメントは不能だが、そもそもどういう経緯でテューバを吹きながらテレビを見ることになったのかそのことの方に興味がある。あの「いかつい」多戸氏のおちゃめな一面が垣間見えるような気がする。


N響アワーなどでは、生真面目に演奏している姿しか見ることができないわけだが、一人一人話を訊いていくと実におもしろい出来事が裏には起きているのだなあと、そういう意味では我々アマチュアと同じ部分で苦労したり、工夫したりしているのだと、妙に安心してなおかつ感心してしまった。

知ってるようで知らない オーケストラ楽器おもしろ雑学事典

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