Festival Variations

CT・スミス

先月の終わり頃、何気なくNHKFMを聴いていたら、珍しいことに吹奏楽を電波に乗せていて、シンフォニア・ノビリッシマやアルメニアン・ダンスPart1(先日N響アワーで放送したN響管打セクションの演奏は、良く言えば円熟の、悪く言えばときめかない、ある意味プロ中プロのものだった)等の懐かしいプログラムが多かったのだが、その中で、聴いているうちに胸がドキドキしてきた曲があった。

それが「フェスティヴァル・ヴァリエーションズ」である。

20年近く前、所属していた吹奏楽団を退団する直前の合奏練習で偶然この曲を初見譜読みしたことを思い出したのだ。

とてもじゃないが、この難曲をヘナチョコの私が初見で演奏できるはずもなく、せっかくの貴重なテューバのソロも、あえなく玉砕してしまった苦い思い出がある。

今回のFM放送で、おそらく初めてまともにこの曲を聴いたことになるのだが、シエナ・ウインドの緊張感あふれる演奏も相まって、あまりの曲の難易度に驚いた。

どのセクションも難しいけれど、とりわけホルンセクションの突飛なハイトーンや、この曲全体の演奏の成否を決定づけるような浪々として長大なホルンのソロ。これは本当に大変だと思う。

作曲者がよほどホルンの音を気に入っていたか、個人的にホルン奏者に対して恨みを抱いていたか!?どちらかなのではあるまいか。

普段は伴奏ばかりでお気楽なテューバも、この曲に関しては、音源を聴きながら何回も何回もさらわないと「ヘっぽこ」テューバ吹きには演奏不能である。

マチュア吹奏楽団がこの曲を演奏会で演奏する場合、トランペットとホルンのセクション「全員」が相当レベルの技術を持っていて、なおかつセクション練習を積み重ねておかないと、聴衆は勿論のこと自分達自信が演奏していてストレスが充満することは必至であろう。

逆に言えば、やりがい満点の名曲といえるのではないか。だから、仮に消化不良のストレスが残るとしても、この曲を本番で演奏してから退団すればよかったと少し悔いが残る。

尤も、私が知らないだけで、世間の演奏レベルは上昇していて、今ではどこでも演奏するような平凡な曲なのかもしれないが・・・。

ブラスの祭典(3)

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