「オケ吹き」って?
吹奏楽出身のオケ管楽器奏者に対して、その演奏がイケてない場合に、「あの人はオケ吹きができてないネ!」という台詞を耳にすることがよくある。会話の流れの中のことなのでいつも軽く受け流していたが、いったいどういう意味なのだろう。
オケと吹奏楽の管楽器奏法、いや、もっと言えばクラシックに限らずポピュラー音楽やジャズに至るまでその奏法の基本に変わりはないはずである。違うのは編成と人数、音楽のスタイルなのであって、決して「オケ吹き」なる奏法が存在するとは思えないのである。
オケの管楽器奏者は、そのひとりひとりが「ソロ奏者」であると通常いわれている。それがクラリネットの2番奏者でもホルンの4番奏者であっても、である。つまりひとつの楽譜を複数の奏者で演奏することがないのだ。たとえヘナチョコアマオケであっても、これは普遍の大原則なので一人一人の責任は重大である。
反対に吹奏楽(プロの楽団は別)では、「所属するメンバーをなるべく全員ステージに乗せたい!」という民主的な考えから、最適な編成のバランスにはあえて眼をつむってしまうことが見受けられる。人気のフルート、トランペットがが10人ずつもいながら、管弦楽のヴァイオリンにあたるクラリネットが6人しかいなかったりといった珍編成の演奏会をたびたび聴いたことがある。(実に自然体!) つまり吹奏楽ではひとつの楽譜を複数(時には大人数)の奏者で演奏することが日常的だということだ。なかには依頼心の強い奏者が存在することは否定できない。
ここで「オケ吹き」の意味がわかりかけてきたような気がする。「オケ吹き」とは「奏法」のことではなく「ソロ奏者の自覚を持つ」ということなのではないか。
管弦楽に携わっていると、テューバの場合一匹狼なので、野球の「一球入魂」ならぬ「一音入魂」で非常に緊張感漂うわけだが、おかげで自然に「オケ吹き」になるようだ。
逆に吹奏楽の場合だと、テューバセクション(いろんなレベルの奏者)3〜4名を一枚岩にまとめ上げるのはとても大変で、むしろ吹奏楽にこそ「オケ吹き」ができる奏者が強く望まれるのではないかと思えるくらい。
まあ、いずれにしろ、「オケ吹き」という言葉には吹奏楽を蔑むようなニュアンスが含まれているような気がするのであまり使用しないことにしょうと、少なくとも私は使わないようにしようと思っている。
この楽団の奏者は勿論全員「オケ吹き」。 (アッ! 使ってしまった!)
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