Portrait of an Artist ARNOLD JACOBS

伝説のテュービスト、アーノルド・ジェイコブスの非常に稀有で貴重なCD。

現在世界中の第一線で活躍している管楽器奏者のほとんどに影響を与えた呼吸法の大家ジェイコブスの練習風景などのプライベート音源を集めてCDに収めたとてもユニークな1枚である。ヴォーン・ウィリアムズテューバ協奏曲の練習風景も収録されている。チャルダッシュの練習風景ではメトロノームの音まで鮮明に録音されている!

Portrait of an Artist: Arnold Jacobs Tuba

Portrait of an Artist: Arnold Jacobs Tuba

とりわけ珍しいと思われるのは、リヒャルト・シュトラウスのホルンコンチェルト1番を吹奏楽の伴奏に乗せてテューバで演奏したもの。どういう経緯でこの形態になったのかわからないが、これと全く同じことを高時代私も経験した記憶がある。


高校2年時の春の定演のことである。我が高校のOBでフリーのテュービストとして活躍している佐々木俊裕氏が全く同じ曲をソリストとして演奏した。


当時田舎者の何も知らない私は本番の直前に突然やってきたOBのソリストに対してどういう態度をとっていいのか分らずにただドギマギしていた。小心者で気の利かない私はせっかくの「プロの奏者」から何かを盗むとか疑問点を質問するとかしないまま演奏会が終わってしまったのである。

ただ伴奏者として参加して、その演奏そのソロテューバの音は記憶に深くきざまれていたらしく、後にオリジナルのホルンのレコードを買ってむさぼり聴いてとても好きな曲のひとつになっていったのである。


テューバは歴史の浅い楽器のため、協奏曲自体の数が少なく、「音楽」として「鑑賞」に堪えるものとなると本当に限られてしまう。そこで音域は違うが柔らかく温かみのある音で共通するホルンの協奏曲を演奏する例が時々見受けられるが、これはそういった典型的なことなのであろう。